お知らせ

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イスの修復

2013年12月19日

一宮市内には国の有形文化財に指定されている”旧湊屋文衛門邸”があります。
そこの”茶店湊屋”で使われている椅子が壊れたため、修復を依頼されました。

壊れたイスをみてみると、座面が縦に3分割状態にバラバラになっており、
接ぎ合わせ部分が完全に接ぎキレをおこしていました。
あまりに衝撃的だったので写真を撮り忘れてしまいましたが、壊れたイスの裏をみると
”〇△民芸家具”のシールが貼ってあり、シールの傍には”正”という漢字が掘り込んでありました。

壊れ方から推測すると一気に壊れた様子で”ミシミシッ、バキン!”という感じでしょうか。
接着部位が経年劣化で壊れたみたいですが、ちょっと構造的にも・・・・・
背板のスポークも接着剤がほとんど効いておらず、手で引っ張ると容易に抜けたので、
接ぎ切れした部分をペーパーできれいにした後、エポキシ接着剤で固めました。
座面の周囲が円いためクランプで抑えることが難しく、結構苦労しました。

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はみ出した接着剤をサンドペーパーできれいにしたところが接ぎキレをおこした部分です。
椅子に詳しい方だったらわかると思いますが、座面に座ると”接ぎ部位”には曲げ応力が加わり、
接着しているところがはがれようとします。
脚が転んでいるとなおさらで、脚が横にずれる力がかかり座面に加わる応力はさらに増加します。
そのため接ぎ合わせ部分は、強度面での十分な配慮が必要ですが、
壊れた椅子は”さね”が入っておらず”イモ接ぎ”で接着剤だけでもたせる構造でした。
多分掘り込み座面のためさねを省略したのかなと推測されます。

そのため修復した椅子は、座面の裏側に補強板を追加しておきました。
この補強板が割れない限りは椅子が壊れることはないでしょう。

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着色剤でブラウン色に色付けした後、カラーオイルで仕上げた状態ですが
あまり違和感のない状態に仕上がりました。
”茶店湊屋”には同じ椅子があと3脚ありますが、壊れるのも時間の問題なので
納品の時に確認してこようと思います。

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